「サイバスロンに勝って筋電義手の常識を覆したい」大学発ベンチャー メルティンMMIにインタビュー

2016/09/21 07:30

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2015年10月に開催された、攻殻機動隊REALIZE PROJECT 東京大会のPitch to the REALIZEで、「多自由度」「高出力」「自然な動き」「直感的な操作」を同時に解決する、世界唯一の意志を機械に直接反映できる筋電義手をプレゼンし優秀賞を受賞。2016年2月に開催された、攻殻機動隊 REALIZE PROJECT the AWARD でも会場を沸かせていたメルティンMMI。

 

攻殻機動隊 REALIZE PROJECTでは、攻殻機動隊の世界の中でも特に重要な技術である義体を扱っているメルティンMMIの取締役執行役員 COO 粕谷昌宏氏にインタビューを行った。
――メルティンMMIのプロジェクトについて教えていただけますか

 

粕谷:義手(ハンド)を継続的に開発しています。あと、ワイヤレスクラウド型筋電計というものをつくってまして。まだ、名前は正式に決めたわけじゃないのですが。これが実物です。

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1円玉とほぼ同サイズなので、「1円玉サイズの筋電計」とも言っています。

 

――これはどういったものなんでしょうか?

 

粕谷:生体信号を計測するセンサーですね。裏側が電極になっていて、これを肌に押し当てると、筋肉を流れている電位が取れます。これは、単体の生体信号のセンサーなんです。設定を変更すると、脳波とかも測れたりします。ワイヤレスモジュールも搭載しているので、クラウドに筋電データをアップもできますし、ワイヤレスで何かをコントロールする、といったことにも使えます。

 

例えば、これを腕に付けた状態でジェスチャーをすると、プレゼンのときにPowerPointが操作できたり。そういうことを今やってます。

 

――このセンサーは義手にも使われるのでしょうか?

 

粕谷:使える、使えないで言えば使えるのですが、義手用途には使われないかなと思います。ワイヤレスだと、電波がなくなったら手が動きませんみたいな状態になりかねないので。

 

義手で使うというよりは、市場に出ている筋電計ってワイヤレスのものだと特に高いので、IoTに興味がある人たちが気軽に買って、気軽に試せるセンサーとしてまずは出せたらいいなと思っています。

 

―――メルティンさんというと、5本指が動く義手のイメージですが、義手と筋電計どちらがメインなのでしょうか?

 

粕谷:今は筋電計を生かした何かしらのアプリケーションですね。筋電でコントロールしたら何がうれしいかというのを探している最中です。このデバイスが量産体制にのったときに、例えばハッカソンをやるとか、そういうことも考えています。

 

――量産体制のスケジュールは見えているんでしょうか?

 

粕谷:中身の回路はほとんどフィックスしたので、今はデザイナーに外装のデザインをお願いしているところです。

 

――筋電センサーはどのように使われると思いますか?

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粕谷:まだ悩んでるところではあります。でも、直感的に機械をコントロールできるインターフェースのような形になると思います。あとは、筋電って筋肉をどのぐらい使ってるかとか、筋肉がどれぐらい疲労しているかっていう情報も取れてくるので、例えば、トレーニングに使いたい人もいると思うんです。

 

今って加速度センサーとかでどのくらい動いたから何キロカロリー消費したという形式です。これって推測でしかないわけですよね。これが、筋電計だと実際に筋肉がどのくらい疲労したかがわかるようになります。

 

――今のウェアラブルデバイスの上位版のような。

 

粕谷:あとは、ヘルスケア関係ですかね。心電とかもとれたりするので、日々の健康モニタリングとかまで広げられればなと思います。

 

――発売はいつを予定していますか?

 

粕谷:今年中には売りたいなと思っています。

 

――値段の想定は?

 

粕谷:値段感は決めていません。最終製品がどのくらいのスペックを要求するかとか、ロットにもよるので。でも、何十万円とかではなく、数万円からいけると思います。筋電センサーって普通買おうと思ったら、ケーブルのもので5万円、ワイヤレスセットだと10〜20万円とかなんで、それに比べたらはるかに安いと思います。

 

――メルティンMMIが作るような形で製品化を試みた企業はないんですか?

 

粕谷:なかったですね。というのも、今までパソコン上でしか動かせなかったんですよね、性能的に。2010年を過ぎた頃からようやく小さなプロセッサーにも載るようになってきたので。実際にやってることとしては、僕が中学生のときに目にしてたものなんです。その頃から、研究室レベルではできていました。ただそのためには、大きいパソコンが必要だったり、何十万円もする計測器が必要だった。

 

――時代が追いついてきた。

 

粕谷:そうですね。あとパーツの価格が手頃になってきたのもあります。

 

――僕が思っていたメルティンMMIのイメージとまったく違いました。5本指の義手に関しては今どうなっているのでしょうか?

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粕谷: 10月にサイバスロンという最先端のロボット工学やサイボーグ技術などによって能力を拡張した障がい者アスリートの国際大会が開催されるのですが、そこにメルティンもエントリーしています。今は、サイバスロンに向けて研究開発をしているところです。

 

――どういうタスクがあるのでしょうか?

 

粕谷:いろんな形のものを右から左につかんで移すとか、食器をお盆に乗せて運ぶとか、電球を入れ替えるとか、そういう日常生活に即したタスクです。その中で一つだけ、イライラ棒があるんですけどね。

 

――何チームで戦うのでしょうか?

 

粕谷:義手部門にエントリーしているのは11チームです。部門は、6部門あって、メルティンは、2部門に出ます。義手の部門と、あともうひとつFESバイク部門です。

 

FESバイク部門は、足が動かない人、足はあるんだけれども、脊椎とかが損傷してしまって動かない人の足を再び動かして自転車のレースをするといったものです。あと、BMIレースというものもあって、これは思念だけでキャラクターを操ってレースをするもの。体が動かない人が外骨格を着て何かタスクをやるといった外骨格レースや、車いすのレースと義足のレースがあります。

 

――世界を相手に勝てそうでしょうか?

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粕谷:メルティンの義手が得意なところと不得意なところ、他の義手が得意なところ、不得意なところがやっぱりありまして。たとえば、うちの義手だと色んな形状に自然になじんで、均等に圧力をかけることができるので、やわらかいものを掴んだりするのは得意なんです。

 

その反面、指先を精密に合わせるとか、そういう作業はけっこう苦手だったりして。そういった課題は出てきたりしていますね。

 

とはいえ、うちの義手は自分が思った通りに動くという大きな特長があるので。普通の義手って、コマンド入力をしなくてはいけなくて、例えば右右左とやると手首が回りますとか、左左右左ってやるとピースサインになりますとかっていう感じなんですね。

 

――それはどこでコマンドするのでしょうか?

 

粕谷:切断されてる部位にもよりますが、基本的に一番多いのが肘と手首の間の切断部分。例えば、手首を手前にやるときの筋肉と外側に向けるときの筋肉2カ所に筋電センサーをつけて、右右左ってやるとどうなるとか、左左右左ってやるとどうなるとかっていう感じなんです。

 

対してうちの義手は、グーにしようと思えばグーになりますし、チョキしようと思えばチョキになるので、大きな差があると思っています。いろんな動作をするときに、コマンドを入力している時間とかかなり短縮されることにも繋がるので。

 

あと、うちの義手は手首が自由に動く義手なんです。普通の筋電義手は、例えば、「手首は可動します」と書いてあるものでも、可動はするけど反対の手で動かしてね、みたいなものが多くて。確かに可動ではあるんですね・・・。

 

うちの義手くらい自由に動かせる義手ってないんですね。イライラ棒をやるときなんかは、手首の動きが重要になるので我々が優位だと思います。

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――素朴な疑問なんですけど、なんでメルティンMMIだけ優れているのでしょうか?

 

粕谷: 10年以上筋電の研究をしてきたっていうのがあるので。通常、筋電センサーを貼ると、普通は力が入ってるかどうか、つまり、筋電が発生しているか否かしか信頼して制御に用いることができません。うちの場合は、どういう筋電が発生しているかまで精度よくわかります。なので、筋電がただ出ているだけじゃなくて、グーの筋電が出てるのか、チョキの筋電が出てるのかまでわかる、ということです。そのソフトウェアというか、アルゴリズムの部分を持ってるから他と違うというのはあります。

 

――他は持ってないんですね。

 

粕谷:持ってないですね。研究しているところもあるんですけど、現実的にあり得ない構成になっていて。例えば、腕に電極を数十個貼りますよとか、1回キャリブレーションして何分もオフライン解析をすると使えますよ、とか、そういう感じなんですね。実際使うにはちょっと無理ですよね。

 

――義手を作っている他の企業からすると、メルティンMMIはどう見えているんでしょうか? 脅威なんでしょうか? 

 

粕谷:おそらく、メルティンのことをあまり知らないと思います。そういう意味でもサイバスロンに出て、うちがどういうことができるのか見せたいっていうのもありますよね。

 

ハードウェアは、販売できるクオリティにするまでが大変なので、すでに義手を販売しているメーカーに、うちのアルゴリズムだけを売るビジネスもやりたいと思っています。サイバスロンに出て、あそこのアルゴリズムすごいじゃんみたいな感じになって、ビジネスに発展させるのも一つの狙いです。

 

――他にも狙いはあるんですか?

 

粕谷:今まで筋電義手って、「能動的に動かせはするけど手と同じ感覚では動かせない」というのが常識だったので、それはもはや常識じゃないんだよ、と伝えたいです。