「2029年(攻殻機動隊の設定の年)は、生体信号データを掌握した者が勝つ」メルティンMMIに聞いた義体の未来

2016/09/22 07:30

MMI

 

2015年10月に開催された、攻殻機動隊REALIZE PROJECT 東京大会のPitch to the REALIZEで、「多自由度」「高出力」「自然な動き」を同時に解決する、世界唯一の意志を機械に直接反映できる筋電義手をプレゼンし優秀賞を受賞。2016年2月に開催された、攻殻機動隊 REALIZE PROJECT the AWARD でも会場を沸かせていたメルティンMMI。

 

攻殻機動隊 REALIZE PROJECTでは、攻殻機動隊の世界の中でも特に重要な技術である義体を扱っているメルティンMMIの取締役執行役員 COO 粕谷昌宏氏にインタビューを行った。

 

二回目は、攻殻機動隊 REALIZE PROJECTへの出場のキッカケや、義体の未来の話について。
――攻殻機動隊 REALIZE PROJECT に出場されたきっかけは何だったのでしょうか?

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粕谷:そもそもリアライズプロジェクトが始まるのは、ネットで調べて知っていました。攻殻機動隊 REALIZE PROJECTのコンテストを知ったときは「これは、うちが絶対に出なきゃ駄目なやつじゃん!」と思って。

 

――その理由は?

 

粕谷:メルティンは、「義体・電脳をつくります」と言っているような会社なんで、うちが出なくて誰が出るという感じで。

 

――「義体・電脳」に興味をもったキッカケは?

 

粕谷:もともとは医療と工学に関する仕事をやりたいって漠然とした思いがあって。そこから、義手とかリハビリテーション工学とかそういった領域があることを知って、サイボーグ的なテクノロジーをやりたいなと思ったのがまずはじめです。

 

――何歳くらいのころに思っていたことなんですか?

 

粕谷:中学校3年生ぐらいです。そこから、関連することをネットでたくさん調べまくりました。そこで、『マトリックス』に出会って、面白いなと思っていろいろ調べていたら、攻殻機動隊にかなり影響を受けているらしいという話を見つけて、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』を観ました。

 

そしたら、自分が実現したいなと漠然と思っていた世界観が明確に描かれていて、「これだ!」と思ってそこから参考にするようになりました。

 

――世界観に影響をうけたというのは具体的にどのあたりにでしょうか。

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粕谷:自分の体を乗り物かのようにというか、普通にツールかのように使っている雰囲気というか。大きな怪我をしても「パーツを交換すればいい」っていうノリですよね。あと、手を使わずに意識で車を運転とか、通信とか、会話をするとか、そういうのがもう当たり前になっている状態。うまく言葉では言い表せないですが、そういった世界観です。

 

――なんとなくわかります。

 

粕谷:今までは、漠然と思っていたものを映像で観たことで、これから先をどう動いていくかが決まった感じですね。

 

――というと?

 

粕谷:将来あの世界観を実現する研究をするとしたら、どういう研究室や大学があるんだろうって調べ初めて、そのなかでヒットしたのが、僕がこの前卒業した横井先生の研究室でした。

 

ただ、見つけつつも大学は色々あって違うところに行ったんですね。その後、博士課程へ行くときに横井先生のところに行くことになりました。

 

――大学は違う場所に行ったんですね。

 

粕谷:そうなんです。そもそも僕が興味を持つキッカケになった記事がありまして。その記事は、3研究室か4研究室が合同で、義手を使ってものをつかんだ感覚を遠隔の人に伝える研究をしている、ということが書かれていて。

 

その記事のなかで義手をつくってる横井研究室と、触覚のセンサーをつくっている研究室、その触覚を体にフィードバックする神経系の研究室があって。その研究グループのどれかに入りたいなと思ったんです。

 

そのときに僕が思ったのは、義手はもう完成されてきている感じがして。当時、中学生なので、そこから大学に入って研究室に行くって何年も先の話ですよね。その頃にはもう研究は終わってるだろうと予想していました。

 

電脳にも興味はあったので、ハードを研究するんじゃなくて、脳と神経系と機械とインターフェースといった分野をやったほうが有益なのかなと思って。

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――中学生でそこまで考えていたのが驚きです。

 

粕谷:大学受験で色んなところを受験したんですが、早稲田大学に受かって。本当に入りたい研究室は別の大学だったんですけど、本格的に研究室で研究ができるのは大学院からだし、早稲田大学に行って有権者とかいろいろな方と人脈を築いて将来の事業展開につなげたほうが賢いかなと思って早稲田大学にしました。とはいえ、早稲田でも義手の研究はしてますけどね。

 

――「攻殻機動隊 REALIZE PROJECT the AWARD」に展示してみてどうでした?

 

粕谷:攻殻機動隊は僕がもともと好きな作品であり、メルティンとマッチした題材なので、一緒に何かできるといいなとは思っていました。the AWARDは、攻殻機動隊に興味がある人が多く来ていたので、普通の展示会に出展するのとは違ってするどい質問をされたり、話をしていて楽しかったです。最先端の技術に興味や関心がある人たちに情報を届けられたのかな、という気はしています。

 

――2029年、攻殻機動隊の年にメルティンMMIはどうなっていると思いますか?

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粕谷:メルティンがワイヤレス筋電計を作っている理由の一つでもあるんですけど、最終的に、生体信号というデータを掌握した者が勝つかなと思っていて。

 

ワイヤレス筋電計をクラウド連携にした理由が、これを使ってユーザがジェスチャーで何かコントロールするとか、便利に使うとします。そのデータを僕たちがどんどん蓄積して、例えば、全世界の人の筋電データベースみたいなものを持ってしまえば、もっと素晴らしいアルゴリズムとかを解析して導き出すことができると思っていて。

 

そうやっていくことで、例えば、プロ選手の何々のときの筋電みたいな生体信号のストアとかもオープンできるかもしれません。生体信号を筋肉に与えることで人の体を動かすことができるんで、例えばプロ選手の投球フォームのデータを自分に流し込むとか、そういうビジネスもあるかなと思っていて。

 

それによってさらに、何かインターフェースとして使うときの精度が上がったりとか、今グーとかチョキとかパーとかだけなのを、ペン回しができますとか、そういう巧緻動作まで広げられればいいなと。

 

そのための基盤となるデータベースをつくりたいんです。2029年に攻殻機動隊のような世界観が実現されるとして、例えば、「義体と電脳の通信フォーマットを実はメルティンがつくっていた」とか、根幹のほんとにベースのところをうちがやってるとかっこいいなとは思ってます。

 

――神山監督が攻殻機動隊 REALIZE PROJECTのシンポジウムで、「攻殻機動隊の世界が実現するとして義体を乗りこなせるのか?」という話をされていましたが、それにもつながる話ですね。

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粕谷:身体拡張をやってるのもそこで、筋電センサーを使ってジェスチャーでコントロールをすると言っても、やっぱり自分の運動器の範疇を出てないじゃないですか。そこを例えば、3本目の手を独立で制御しようと思ったら、今までの方法論と違うわけですよね。

 

僕は3本目の手ではんだ付けとかをやっているんですけど、口の開閉を手の動きにマッピングしたりしているんで、どこかしらの運動機能が犠牲になってるわけです。口の開閉を3本目の手に割り当ててしまった場合、会話をしながらはんだ付けはできないので。

 

そういうところもどんどん身体拡張を研究する中で突き詰めていって、最終的にはいくらでも拡張できるよみたいな状態にまでもっていきたいなという感じがします。

 

――攻殻機動隊でオペレーターが指を拡張してキーボードを使っている描写ありますよね。あれも似たような話なのかもしれないですね。

 

粕谷:そういう義体に乗りかえたところですぐには使えないけど、メルティン社が出しているドライバをインストールするとすぐに使えるらしい、とか、そういうふうになれるといいですね。