【西村真里子の突撃体験】ゴーストと身体の分離を体験できるテレイグジスタンスロボット(前編)

2015/07/17 10:00

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6月12日に「攻殻機動隊 REALIZE PROJECT」の発表会が開催されました(発表会の内容についてはコチラの記事をご覧ください)。発表会では、攻殻機動隊にまつわる様々なプロジェクトの展示も行われており、その中でもひときわ人気だったのが、ゴーストと身体の分離を体験できる「テレイグジスタンスロボット」のデモ。

 

テレイグジスタンスロボットは、離れた場所にいるロボットと自身がつながることで、自分自身がロボットに入り込んだかのような感覚を味わうことができるというもの。ただ、発表会で展示されていたものは簡易版のため体験できたのは視覚のみの共有でした。実際は、視覚だけでなく聴覚や触覚なども共有できるということなので、テレイグジスタンスロボットが展示されている日本科学未来館に攻殻機動隊 REALIZE PROJECTの顧問・エバンジェリスト 西村真里子が突撃体験してきました。

 

日本科学未来館は、最新テクノロジーから地球環境・宇宙の探求まで、さまざまなスケールで現在進行形の科学技術を体験することができる施設。テレイグジスタンスロボットは、3階にある「メディアラボ」のフロアに展示されています。コチラがテレイグジスタンスロボットのTelesarⅤ(テレサⅤ)。

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TelesarⅤは、ヘッドマウントディスプレイとテレイグジスタンスマスタスレーブシステムを使って操作します。

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今回は、研究員の方によるデモをしてもらいながら、南澤孝太氏(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科准教授)にテレイグジスタンスロボットについて話を伺いました。

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南澤准教授(以下、南澤):元々、僕のボスである舘先生(東京大学 名誉教授・慶應義塾大学 大学院メディアデザイン研究科 特別招聘教授)が30年前から、「自分が遠くに存在する」ということをどうやったらできるかを研究しており、1980年ぐらいには最初の一号機(赤いロボット)を作りました。僕が加わったのは愛知万博が開催された時なんですが、その時に二号機(白いロボット)を作ったんですね。今デモでお見せしているのが五号機です。

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南澤:少しづつ過程があって。いわゆるヘッドマウントディスプレイを使ってロボットの目と人間の目が連動して、頭の向きも全く同じように動くと、まるで自分の目がロボットに飛び移ったような義体のようなものができるだろうと。そういうことを考えたのが30年前です。

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西村:面白い! 今の自分自身の肉体がゴーストになって義体を動かすってことができるんですね。

 

南澤:そうなんです。だから自分のゴーストとボディが切り離せるかどうか、というのが一つの大きな意志だったんですよ。結局ゴーストの本質って何かって考えたときに、それは感覚の入力と行動の出力だろうと。そこにボディというインターフェイスがあるんだけど、そこはロボットに置換可能なんじゃないかというのが基本的な考え方です。

そうすると、視覚だったり耳だったり指だったりの感覚の情報をデータ化して、ネットで転送してロボット側で出してあげれば、人間の魂にとっては同じことで。じゃあ触った感覚を伝えないといけないよね、腰の動きとか複雑な動きなどもできないといけないよねと。

よくある昔のロボットって首だけ動くじゃないですか。それだと、運動視差って言うんですけど、複雑な動きができなくて全然リアリティがない。つまり人は運動して行動する中で、まわりの世界とかモノとか相手のことを認識するってところが重要で。体の動きがとても大事なんです。

 

西村:凄いですね! テレイグジスタンス。複雑な動きができるのは五号機だけなんですか?

 

南澤:そうです。今の五号機だけです。五号機のすごい所は腰の動きができることと、指でちゃんと触覚がわかる事ですね。彼の指、触ってみてください。

*ロボットの指を触る南澤准教授

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*ロボットを動かしている研究員の指を触る西村氏

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西村:あ、びりびりする!

 

南澤:僕がトントントンと叩くと…

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西村:ああ、叩かれてるのがわかります! 凄い!

 

南澤:後は僕の服を触ったりすると、ざらざらしますよ。まるでホントにモノを掴んだ感じがします。コップのデモもやってみましょうか。

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南澤:今普通にコップ持ったじゃないですか。まずこれも凄いんですよ。これを例えばASHIMOみたいなロボットでやろうとすると、距離はどこにあるか、そこまでどういう風に腕を運ぶかを全部計算してやらなきゃいけないんです。でも、これは見えたところに手を持っていってるだけ。それでコップが持てます。こういうことが、計算とか何もせずに自分の感覚で全部できちゃう。

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西村:ホントに自分の義体がそこにあるっていう感じですね。

 

南澤:あとで体験していただこうと思っていますが、体験してる最中に自分を見る…っていうのがとても面白くて。

 

西村:幽体離脱的な感じですか?

 

南澤:SFだとロボットを動かしている最中に体を触られるというか、刺されたりして意識が落ちる描写がありますが、あれは実は事実で意識が身体側にないんですよ。意識はロボットにいるのに、いきなり自分の体がひゅって触られる感じ。

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西村:面白い。それって自分の視覚とか、もちろん感触もそうだけど、そういうのがロボットに移行すると、痒さとかいろんな皮膚感覚とかも移行しちゃうんですか? 皮膚感覚全部は行ってないですよね?

 

南澤:全部は行ってないです。意識は身体に向かなくなるのであんまり気にしなくなるんですけど、突如として立ち上がると一気にふぁっと身体側に戻ってくるんですよ。

 

西村:魂が戻ってくるんだ! それはすごく面白い感覚ですね。いろんなところに移動できて、いろんな人と触れ合えるのはとても素敵ですが、既に研究以外で使用されていたりするんですか?

 

南澤:今は、ショベルカーにロボットを乗せてみるっていうのをやり始めていて。僕もキャタピラをロボット経由で運転したんですけど、普通に数十メートル離れたところから運転できるんですよね。一キロぐらい離れたところに乗り込んでそこでモノを動かす事も可能っていう話もあって。

 

西村:災害時は便利ですよね。

 

南澤:震災の時に福島で、災害復旧できてる地域っていうのは普段から遠隔操縦していたチームなんですね。逆にそれしかいなくて、たぶん日本で数十人しかいないんですよ、遠隔操縦できる人が。このロボットのいいところは、普段乗り慣れてる人であれば、そのまま自分の経験値で運転できること。練習をそんなにしなくてもその場で普通に乗れるようになってしまうんです。例えばロボット経由でバックミラーを使った後方確認をみんな普通にできちゃうんです。

 

西村:凄い! こうなってくると自分の肉体ってなんなんだろうって考えちゃいますね。

 

後編へ続く>>