【西村真里子の突撃体験】ゴーストと身体の分離を体験できるテレイグジスタンスロボット(後編)

2015/07/24 13:00

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6月12日に開催された「攻殻機動隊 REALIZE PROJECT」の発表会中で注目を集めていた「テレイグジスタンスロボット」。

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テレイグジスタンスロボットは、離れた場所にいるロボットと自身がつながることで、自分自身がロボットに入り込んだかのような感覚を味わうことができるというもの。ただ、発表会で展示されていたものは簡易版のため体験できたのは視覚のみの共有でした。実際は、視覚だけでなく聴覚や触覚なども共有できるということなので、テレイグジスタンスロボットが展示されている日本科学未来館に慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科南澤准教授らに話を伺いに攻殻機動隊 REALIZE PROJECTの顧問・エバンジェリスト 西村真里子が突撃して体験してきました。(前編はコチラ

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南澤准教授(以下、南澤):僕らが次のフェーズでやりたいと思っているのが、ひとつのロボットに複数人が同時に入るとか、一人が複数のロボットを分散操作すること。例えば、半自立ロボットとかにしてしまえば、必ずしも24時間ずっと意識を向ける必要はなくなると思っていて。人間って普段は、歩くときとかって何も考えずに歩くじゃないですか。

だから、こういうロボットが例えば何台かいて、それを一人が操縦するって考えるんじゃなくて、普段は半自立で動いていて何かトラブルがあった時に意識を向けける。トラブルが解決したらまた俯瞰の意識に戻るみたいな。

 

西村:凄い! これを通して人間の持っている才能というか可能性を…

 

南澤:そうですね。身体に縛られてしまっていた部分っていうのはある意味1回解放できると思っています。どこまで身体っていうのが分散したり広がったりしうるのか、意識もどこまで分散しうるのかっていうとこも踏み込める部分で。

ようやく一番ハイエンドの一対一のプラットフォームができたという感じなんで。次は一対多とか多対一とか。これも前言ってたことなんですが、「地球に時差があるわけだから、一体のロボットに例えば6時間交代で4地点から入れば24時間動かせる」とかそういう話もあったりして。そういった多対一、一対多っていうのはこれから作られていくと思います。

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西村:5号機は何台あるんですか?

 

南澤:これは一点ものですね。5号機はあくまでハイエンド機として作っているので、実用型としてはそこまで攻めないほうがいいかなと思っています。例えば、3Dプリンターで作れるようなローコストバージョンを作るとか。足の部分はルンバでいいじゃないかとか、もっと小さくていいんじゃないかなど考えています。

 

西村:面白い! ロボットがもっと簡易で作れるようになると工場とかに入るのかも?

 

南澤:そうですね。これが上手く工場のラインでバンバン稼働すると、本当にちゃんとしたパートタイムができるわけです。例えば、朝から24時間フル稼働の工場があったとしても、そこに実はさまざまな国から無理せず自分の働きたい時間に人がロボットに入るスケジューリングが組める。こっちから見るとロボットは24時間動いてるんだけど、中の人は実は一日で8人ぐらい変わってるとか。

そこにさらにスキルを持ったディレクターレベルの人が俯瞰的に見ていて、何かトラブルがあったらちょっと入れ替わって手助けをしたり。で、また戻ると。

 

西村:それは世界が変わりますね。これって実用レベルには何年ぐらいとかあるんですか?

 

南澤:実用レベルに関しては、僕らだけではできないところがあって…。どっちかと言うと、いつ・どこで・誰と繋がるかの方が大きいかなと思っています。ちゃんと社会にデプロイするところっていうのは、僕らだけの力ではどうしてもできないっていうところがあって。

自治体や地域とくっついてやるってところを事あるごとに仕掛けようとはしてるんですけどケースにまだ留まってますね。

例えば、攻殻機動隊のハッカソンプロジェクトでもいいんですけど、テレイグジスタンスをテーマに、どういう形で都市を変えられるかとか、企業のオペレーションを変えられるか、などもできますよね。

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西村:顔って3Dプリンターで作ってますよね? 人間に似せたものにしなかったのは理由があるんですか?

 

南澤:あらゆる人が入れるプラットフォームだから、個性を持たせすぎたくはないんです。個性は動かす人の動きで出ていて。彼(オペレーター)の場合だと慣れてるからけっこう自信を持ってたたずんでますけど、おどおどしてると上目使いになったりとか、けっこう性格があらわれるんですよ。

だから動きで性格を表して、形はむしろフラットにっていう感じを狙ってます。まあデザインはなんとかしたほうがありますけど(笑

 

西村:でも面白い。攻殻機動隊から離れちゃいますけど、エヴァじゃないですけど、自分が入りやすいシンクロしやすいような機体とか出てくるかもしれないですね。

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西村:このデモは近い距離でのデモですが遠隔もできますか?

 

南澤:もちろん、遠くへ行けます。ここと慶応とか、慶応と東大などやったりしてます。ただ、デモとしては横で動いてるほうが楽しいんですよ。自分を見れたりとか。ホントに遠くでやっちゃってると驚きは少なくて、横で自分を見るとか、動いてる人とロボットの動きがシンクロしてる様子とかがデモとしては面白いんですね。

 

西村:音声でしゃべるってことはやらないんですか?

 

南澤:もちろんできます。デモをする都合上お客さんに届かなきゃいけないのでスピーカーを使ってますけど。

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西村:面白かったのが1月にCESっていうラスベガスのイベントに行ったときに、コストコなどにロボットを導入して、お客さんが困ったときに、どこにトマトの缶があるか? みたいな対応をロボットにやらせるって言っていて。「なんでわざわざロボットにやらせるんですか?」って聞いたら、「人と人だとたまに衝突してしまうこともあるけど、人間ってロボットを相手にすると正確に答えてくれるだろう」とか、「不思議なことに怒りの感情が抑えられるってこともある」って言っていて。そうすると、テレイグジスタンスもオペレーションもついでにできるのかなとか思いました。

 

南澤:そうですね。こっちは個性をだすこともできるし、隠すこともできるからその辺をコントロールできるのが面白いと思いますね。以前シーグラフに参加した際に、遠隔会議ロボットBeamがうろうろしてたのですが、初日はみんなもの珍しく話しかけるんですよ。2日目ぐらいにはなんかよそよそしく無視しはじめて。3日目ぐらいになるとBeamの存在が気にならなくなるんです。もう人と対等な扱いになってくるんですね。ロボットに対する耐性っていうのは3日ぐらいで解決する問題なんですよね。みんなけっこうロボットが入ったらどうなるかって真面目に考えてるけど、やってみると3日ぐらいで解決するんだと。

 

西村:なるほど、すごいそれ面白いですね。3日間って。

 

南澤:今人型でやってますけど、人と違う形もありだし、例えばドローンに乗っけたりもしてるんですよ。ドローンに頭だけ乗っけて操作すると空を飛べるとか。そうすると自分が空を飛ぶこともできます。

 

西村:ドローンも義体とゴーストの関係になれる。

 

南澤:そう、だから形はけっこう何でもありなんです。例えば空飛ぶ途中で、巨人になるようにするためには、目の間隔を広げてあげたらいいんです。だからドローンが飛びあがると同時に目の間隔が広がっていくと世界がミニチュアになっていきます。目の感覚を狭めると小さくもできます。小型なロボットに入れてあげると、世界が逆に大きくなって、いわゆるジオラマとかシルバニアファミリーとかああいうところに等身大で入っていける。

 

西村:凄い! ドラえもんでいうところのガリバートンネルみたいなものですよね。それはいつごろ作り始めるんですか?

 

南澤:それはもう中では作り始めていて、もうできると言えばできます…。

 

西村:もしかしたら来年には展示されてるかもしれない?

 

南澤:どっちかというとそれを実際に使いたいっていう企業側とのマッチングの話ですね。

 

西村:なるほど。USJとかいいかもしれないですね。

 

南澤:元々香港にいたときはあくまで大学的にやっていたので、僕らは作って、企業が来たらそのまま提供する感じだったんですけど、慶応に来てからまるっきりスタンスが変わりました。自治体だろうが会社だろうがはじめから一緒にやろうってスタンスでやっているので、今もいくつもプロジェクトが動いてますけど、もう企画レベルやアイデア出しするところから一緒にやっています。前よりは社会展開は早いですね。

もうちょっとシンプルなバージョンもあったりするんで、攻殻機動隊 REARIZE PROJECTハッカソンで体験してもらって「ここからどうアイデアを広げる!?」みたいなこともできます。

 

西村:それだけのために行列ができそうですよね!

 

最後に、ゴーストと身体の分離を体験できるテレイグジスタンスロボット「TelesarⅤ」を体験させてもらいました。

TelesarⅤは、ヘッドマウントディスプレイとテレイグジスタンスマスタスレーブシステムを使って操作します。写真はテレイグジスタンスマスタスレーブシステムを装着している西村氏。

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テレイグジスタンスマスタスレーブシステムで人間とロボットの動きを連動させます。

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ヘッドマウントディスプレイを装着。


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南澤准教授の指示に従ってコップ間の移動に挑戦する西村氏。

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実際の様子を動画でもご覧いただけます。

 

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