神山監督や冲方丁氏、研究者や教授陣が「攻殻機動隊」の実現可能性を語る。攻殻シンポジウム「テーマ2:電脳」後編

2016/07/07 13:00

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登壇者は、『攻殻機動隊S.A.C(STAND ALONE COMPLX)』シリーズ監督・脚本を担当した映画監督の神山健治氏、「攻殻機動隊ARISE」シリーズ構成・脚本を担当した小説家の冲方丁氏、国立研究開発法人情報通信研究機構の井上大介室長、産業技術組合研究所の梶田秀司氏、東京大学教授の稲見昌彦先生、筑波大学教授の岩田洋夫先生、神戸大学教授の塚本昌彦先生、九州大学名誉教授の村上和彰先生、はこだて未来大学教授の松原仁先生。モデレーターは、A.T.カーニー日本法人会長の梅澤高明氏。

神山監督や冲方丁氏、研究者や教授陣が「攻殻機動隊」の実現可能性を語る。攻殻シンポジウム「テーマ1:義体・ロボット」
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攻殻シンポジウムの最初のテーマは「電脳」。
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梅澤:攻殻機動隊シリーズでは、心のデータ化、ゴーストのコピーについて、データ化できるのであればアップロードできるよねと、ストーリーが展開してきたと思います。

 

さっき松原さんの講義の中でも、機械が意識や感情をもっているようにふるまうことができるという結論を提示されていました。これについて、他の先生の意見も伺いたいんですけど、どうでしょう。みなさん、賛成ですか?

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岩田:記号化できる情報に関してはまったくおっしゃるとおりだと思うんですけど、やっぱり人間って記号化できない部分がかなりあるんですね。最たる例が身体性、身体感覚です。

 

人間は、からだで考える部分ってすごくあって、そこは記号にならないですね。先ほど、書きとりしなくていいなんていう議論もありました。わたしも手で書かなくなって久しいんですけど、そうすると、同音異義語ってだんだん怪しくなってくるんです。ワープロで変換するときに、だんだん自信がなくなってくる。

 

そのへんの記号化できない部分をちゃんとやっていかなきゃいけないんじゃないかなと、そういう問題があると思います。

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稲見:他者から見て、わたしみたいに見えるようなAIはきっと将来できてくると。ただ、わたしから見て、わたしがちゃんとアップロードされたと思えるものはまだむずかしいかもしれないって気がしますね。

 

よく、アンパンマン問題といわれてるんですけれども。アンパンマンの首で、飛ばされちゃった首どうなるんだろうって。おそらく入れ替わってないんですよね。ふたつに分かれてしまってるので、そこで分岐してしまう。

 

つまり、わたしというのがふたつに分岐して。ひとつの、わたしのひとりとしてのわたしはたぶん残り続けるんで、たぶんそこはそう簡単にはアップロードはむずかしい問題かなと思ってます。

 

梅澤:心とからだの分離の問題にもつながるわけですね。

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神山:超人スポーツのときに稲見さんと対談させていただいたときにも、僕も、心とからだが果たして過分か不可分かって話をさせていただいたことがあったんですけど。

 

もし今、義体ができていて、すごい身体能力が高かったとしても、突然僕がそれに入ったとして、恐怖心みたいなものが書き換えられないんじゃないかなっていうのが、僕の体感としてあって。エクストリームスポーツとかを僕は義体に入ったからといって、急にできないんじゃないかな、というようなお話をしたことがあります。

 

脳で考えたこと以上のことって、なかなか人間できないですよね。でも逆に、義体が強制的にそれを体験させてくれたら、もしかしたら脳はそれを学習してアップデートするのかもしれないけど、そこはまだ誰も体験したことがないので。

 

その部分を研究されていく方たちの、データ化できるかできないかって、そのあたりなのかなと思うんですよね。身体で覚えてる部分っていうか。そこが今後どうなっていくのかはすごく興味があります。

 

稲見:からだが変わると心が影響を受けるかというと、最初は戸惑ってもやはり変わる。つまり、排気量の大きな車に乗ると、突然性格が大きくなってしまう人がいるのと同じような現象で、おそらく超人的な義体を使ったときに起きてくると思います。

 

また、性別を変えても、ちゃんと心が変わっていきますよね。実際そういう実験もあります。

 

神山:ただ、全員がなかなかF-1ドライバーにはなれないじゃないですか。それを、全員がF-1ドライバーになれるようになりますかね?

 

梅澤:新しい義体を乗りこなすスキルの高い素子のような人と、そうではない人がいる。

 

稲見:きっとそこをつなげる部分がたぶん人工知能的な。

 

神山:補完してくれるものが出てくるんじゃないかということですね。

 

梅澤:逆に、パワーアップした義体をより上手に乗りこなすようなトレーニングを電脳に対してやるという。

 

稲見:一方で、スキルがある人は、その装置を切っておくとかっこいいみたいな。

 

神山:あとは、そのスキルがアプリ化するとかって可能性もありますかね。

 

冲方:才能がダウンロードできる。いいですね。

 

神山:全員が冲方さんになっちゃいますよ。

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冲方:才能っていろんなものの組み合わせじゃないですか。その中で、日常的にどれが活発化しているかによって個性が変わってきますし。人間、隠された才能を目覚めさせるなんて言葉があるように、つねに潜在的にもってるものですよね。

 

それを外部からの刺激で内側から出てくるのか、あるいは内側から出てくるという考え方自体を今後否定してくことになってくのか、どっちなんですかね。

 

稲見:たぶん、AIが人を超えても残ることのひとつとして、価値判断はあると思うんですね。何をもって自分に価値があるかとか、何を自分はおもしろいと思うのかは、あくまでも自分が自分であるためにあり続けることなので。

 

たとえば、義体をどういう方向のを自分が選ぼうとするかとか、そういうところとかは個性が出てくる。一方で、その義体をつけることによって、自分の個性自体はまったく普遍かというと、それはまたどんどん変わっていくと。

 

つまり、義体って人によってどんどん分化していく未来があるんじゃないですか。義体の分化と申しますか。

 

冲方:あと、人工知能が人間の心をトレースするっていうのをおっしゃってましたけど、どんな心をトレースするとどんなふうに役に立つと思いますか。たとえば、世の中にマイケル・ジャクソンの精神が永遠に生きてほしい人たちっているわけじゃないですか。

 

マイケル・ジャクソンの心をどっかに入れとくと、無限にコンサートができるみたいな、そういう願望を人間がもってる場合、それに応えるっていうのはお考えですか?

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松原:実はそれも、アメリカのベンチャーでデジタルクローンっていう概念があって。人間、中国の昔何千年も前から不老不死っていうのは永遠の希望で。肉体が滅んでも、おっしゃったように、マイケル・ジャクソンみたいに自分自身のアップロードして、それこそSF映画の中みたいですけど。

 

お年寄りの金持ちが多いみたいですが、それをまじめに出資金を募ってやってる会社はあるんですよね。アメリカとかロシアとかで。稲見さんも言ったけれど、どこまで自分がキープできるのかとか、たくさんの問題がありますが。たとえば、1個できるとしたら、コピーもできるはずなので、自分が10個できていいのかとか。いろんな問題が含んでると思いますけれども。

 

おじいちゃんがまだ生きてるかのように孫とコミュニケーションぐらいできるのであれば、そんなに先のことではないかなって気がします。

 

冲方:アップロードされた精神は人間なんですかね、人工知能なんですかね。電脳化したとき、自分がコピー可能になったとき、それは。

 

松原:そこは攻殻機動隊の永遠のテーマでもあるんですけどね。どこからが人間なのかっていうところですよね。たぶん法律的にも、サイボーグもそうですし、どこまで人間で、それこそ人権をどこまで認めるのかとか、選挙権とか、いろんな権利とかっていうのが、そろそろまじめに考えとかないと出てくる問題だとは。

 

まだ肉体の場合は、義手とか義足とかいいと思ってますけど、脳にメモリとかをつけるというのは比較的近くもうできるようになってくるので。そうすると、その人はほんとに人か、という話は出てくる。

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梅澤:あるいは、アップロードされた人の意識をどこまで人としてとらえるのかっていう話ですよね。選挙権はどこまでの人がもってるんですか、みたいな。

 

神山:まだもうちょっと先のような気がしますよね。あくまでデータなような気がします。

 

稲見:AIや、ロボットをみんな法人化しちゃおうみたいな案も最近あるんじゃないですか。人としてはむずかしいんですけども、法人というシステムを使う。また、そのステークホルダーの人たちが責任をとるという感じの議論も最近はあります。

 

梅澤:で、税金もとれると。

 

冲方:人工知能が法人税を払い続けるんですね。