神山監督や冲方丁氏、研究者や教授陣が「攻殻機動隊」の実現可能性を語る。攻殻シンポジウム「今後の抱負について」

2016/07/24 18:00

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2016年2月11日(木)に開催された「攻殻機動隊 REALIZE PROJECT the AWARD」。本記事では、同イベントのなかでレポートの要望が多かった「攻殻シンポジウム」について書き起こしを掲載します。

 

登壇者は、『攻殻機動隊S.A.C(STAND ALONE COMPLX)』シリーズ監督・脚本を担当した映画監督の神山健治氏、「攻殻機動隊ARISE」シリーズ構成・脚本を担当した小説家の冲方丁氏、国立研究開発法人情報通信研究機構の井上大介室長、産業技術組合研究所の梶田秀司氏、東京大学教授の稲見昌彦先生、筑波大学教授の岩田洋夫先生、神戸大学教授の塚本昌彦先生、九州大学名誉教授の村上和彰先生、はこだて未来大学教授の松原仁先生。モデレーターは、A.T.カーニー日本法人会長の梅澤高明氏。

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梅澤:お話はほんとに尽きないんですけど、そろそろエンディングも近づいてまいりましたので、まずは研究陣の7人の先生方から、最後に冲方さん、神山さんに話を聞いていきたいと思います。

 

今日一連のユニバーシティ、それからコンテスト、ハッカソン、そしてこの場での議論を受けて、これからとくに何に注目していくか、あるいは何に注力をしていきたいか。ひと言ずつお話をいただければと思います。岩田さんからお願いします。

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岩田:社会におけるモビリティの話なのですが、実はタチコマってすごいモビリティデバイスで。電脳空間をクルーズできると同時に、実世界を自由に動けるっていう、これは今までになかった技術で、けっこう社会を変えるんじゃないかなというふうに思っています。2029年を待たずして、20年くらいにぜひ一般化したいなというふうに思います。

 

梅澤:岩田さんもつくってらっしゃるし、楽しみにしていきたいと思います。塚本さん、お願いします。

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塚本:わたしは繰り返し申し上げてますように、このヘッドマウントディスプレイを早く広めたいと。みんなで、この場でも、これを介した意思疎通みたいなことができれば楽しいんじゃないかなと思います。

 

梅澤:自由な予測をしていただくと、どういう話になりますか。HMDの普及に関しては。

 

塚本:来年もしこういうイベントやるんだったら、みんなつけてくるということにしましょう笑

 

梅澤:村上さん、お願いします。

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村上:電脳という観点で、ひと言期待してるところで申しますと、我々は、要は智恵というか知識というか、そういった知的活動というものを電子回路的にとらえてるんですけども。

 

実際に我々の論理的な発想というか思考というのはそうかもしれないんですけども、もうちょっと情緒的なところというのは、ケミカル、化け学的な反応が起こってるのかなという気もします。

 

最近病気の原因としてのいろいろな物質の不足であったり、あるいは過多であったりといったことがわかってきてますよね。そういうことでいえば、ケミカルなところがどういうふうに攻殻の世界で今後扱われるのかなと期待したいなと。

 

今まではデジタル、アナログ、デジアナも含めて、電子的だった。ケミカルなところがこの10年間わかってきてますので、それを期待してます。

 

梅澤:今ナノマシンもいろんな形のものがどんどん出てきて、それが体内のいろんなケミカルバランスを変えていくというお話もあります。ありがとうございます。松原さん、お願いします。

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松原:わたしの話の中でも言った、人間、AIだけが進歩するとか、人間が退化するとかではなくて、人間とAIとロボットとか全体、社会全体がシステムとしていかに良くなっていくかということ。

 

人工知能が今までだめだったから、単独でよくしよう、よくしようってしてきたんですけど、そろそろ仲間に入れてもらえるとすれば、これから仲間として社会全体をうまくしていく方向に早くいきたいと思います。

 

梅澤:梶田さん、お願いします。

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梶田:僕からは、さっきも申し上げましたように、丈夫な転んで壊れないロボットというのを、とりあえずヒューマノイドでやりたいんですけど。

 

攻殻の世界観としては一番すばらしいのは、人間型だけじゃなくて、いろんな形の機械が、ロボットがいて、人間と機械が融合してたり、いろんなタイプの人間がいるっていう多様性を非常に期待して、楽しいところでもあるし、リアルにしていきたいところだとは思ってます。

 

梅澤:稲見さん、お願いします。

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稲見:攻殻で一番大きくて深くてまだわからないテーマは「ゴースト」だと思うんですよね。まさに自ら身体とか義体とか、あとバーチャルリアリティーにおけるアバターとか、そういう技術とかが発達してきたときにはじめて攻殻の世界では今まで当たり前だったゴーストと肉体というのが1:1で不可分だったというところが変わってくると。

 

そのときにもしかすると、シンギュラリティ以上、過去の産業革命と同じように、今IT革命といわれているものが達成するというのが。まさに我々の身体観というものが、ゴーストというものを意識することによって変わったときに、あとから見るとすごい革命だというふうにいわれるかなというふうに思って、それを促進できるようにしたいなと思っています。

 

梅澤:というお話を受けて、冲方さん、神山さん、それぞれ2~3分お時間ありますので、今日感じたことでもけっこうですし、これからの抱負、みなさんにお伝えすることがあればそれも含めて。

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冲方:SF作品をつくってきた人たちって、基本的に今まで受容しながら発想してたんですよね。専門家の方にお話を伺ったり、これだけ名だたる方々がそれぞれ研究を日夜行っていて、その成果をまるごと全部受け取ってそれを作品にそのままするという、非常に幸福な環境がずっと続いてたんですけれども。やっぱりエンターテインメントも産業社会とそれこそ仲間になっていく節目になってきたのかなと思いますね。

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できれば僕の抱負としては、この攻殻機動隊のように、ただ先を見おしてるのではなく、そこにある人間のドラマも含めた上での未来世界を提示していきたいなと。しかもそれがデストピアでもなく、ある種ユートピアでもなく、現実世界で人間が当然のように感じる物事が担保された世界を届けていきたいな、とあらためて今日思いました。ほんとに先生方のお話、大変刺激を受けました。ありがとうございます。

 

神山:ひとつのコンテンツが中心になって、ハブになって、いろんなジャンルを研究されてる先生方とか企業だったりとか、そういったものがまとまっていくっていうのは、攻殻機動隊をつくりはじめたときは想像もしなかった部分で。

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プラス、当時予測してたことが、この15年の間にどれだけ実現したかとか、意外と先に進むと思ってた部分がいかない部分があったりだとか。それがすごく、このリアライズプロジェクトを通じてすごく感じる部分があったんですね。

 

さっきの、たとえばケミカルの部分というのは、たしかに攻殻の世界ではあまり取り入れてなかったんですけれども、すごく重要度が増してきていて。今義体の概念を考えたときに、あんなにロボットっぽいものではなくて、もうちょっとバイオ的な部分というのも本来は取り入れるべきだったなというふうに感じたりとか。義体はもっと早く具現化していくんじゃないかと思ったけど、まだまだ時代が進んでなかったりとか。デザインの部分が先に進んでいくというのは意外な部分だったり。

 

あと、電脳に関しては、一番遅れるんじゃないかなと思っていたら、意外にそう遠くないうちに、コンピュータと人間の脳が直結するだろうというふうなことがむしろ最近はフィーチャーされたりしてるというのが、すごく新鮮な驚きとともに、攻殻機動隊もう15年経ちますけれども、古びなかったなという部分と、意外ともう古くなってきたぞというところがあって。

 

まだまだこういうお話をどんどん物語の中に取り入れていく伸びしろは攻殻機動隊にもあるなとは思います。だいたい10年ぐらいでひとつのコンテンツって古びていってしまうものなんですけれども、まだまだ伸びしろのあるコンテンツだったなというふうにあらためて感じてまして。

 

攻殻機動隊のストーリーも設定ももう1回リアライズして、新しい攻殻機動隊まだまだつくれるんじゃないかなと。

 

最終的に、AIに追い越されていく可能性が出てきた中で、我々の存在意義ってどこにあるんだろうとか、あとは人間性という部分ですよね。これも、そもそも変わってくるんじゃないかといわれる中で、ゴーストという個体も含めて、あらたに我々が次の10年、たぶん大きく変わると思うんですけれども、東京オリンピックぐらいまでの間に大きく変わると思います。

 

そこまででどういうふうに人間性みたいなことを定義していくべきかというようなことを次の作品ではもし書く機会があれば書いていきたいなというふうに、今日のお話をいろいろと聞かせていただく中で思いました。

 

梅澤:ありがとうございます。大変楽しみなお話です。今日は攻殻機動隊リアライズというイベントでしたが、次は攻殻機動隊アドバンスですね。ということで、今日のシンポジウム、ここで終了にしたいと思います。神山さん、冲方さん、ふたりのクリエイターの方々と、それからご登壇いただいた7人の研究陣の方々に絶大な拍手をお願いします。